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お茶、その他についての、極く私的なブログ
by tamon
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露伴翁『運命』の私の勝手な口語訳


幸田露伴の『運命』の冒頭部分を口語訳をしてみました。

****

世の中には、自然と定められた「運命」というものがあるのだろうか。

有ると言えば有るようだし、無いと言ってしまえば無いようだ。

昔、洪水が頻繁に起こっていたが、禹帝がその功で治めた。一方、旱魃が地を枯らしてしまったが、殷の初代湯王がその徳で救った。ここには、運命は有るようだし、しかも無いようでもある。

次に、秦の始皇帝が天下統一し、皇帝を称した。

しかしながら、華陰の地に夜、水神が出現し、璧を秦の使者に托して、「今年、祖龍は死ぬであろう」と言ったという。結果、そのとおりに始皇帝はその後沙丘の地で崩御された。

また、唐の玄宗皇帝は、開元時代30年間、天宝年間は14年間、太平を謳歌し贅沢を究めた。とは言いながら、開元の隆盛期に、一行阿闍梨というが「陛下は、万里も(いろいろな処へ)行幸せられ、力が及ばなくなります。」と申し上げると、「訳の分からないことを言うものだ。」と思われたのだった。それが、安禄山の乱が起きて、天宝15年に皇帝は乱を避けて蜀の国へ入る際に、万里橋にさしかかり、驚きハッとして「あの者が言っていた、万里に行幸した時、とはこのことであったか」と悟りなされたという。

これらのことを思うと、運命は無いようでもあるが、有るようでもある。

『定命録』『続定命録』『前定録』『感定録』等、小説や野史の記すところを見れば、吉も凶も禍も福も皆定まった運命があって、飲み食い泣き笑いといった人間生活のすべてが天の意志によるものなのかと考えてしまう。

とはいいながら、書いてあるものの多くは軽い雑書類である。どうして信じるに値しようか。万が一、運命というものがあるとしても、予測できないのが運命である。そんな推測し難いものを畏れて、占い師といった輩に頭を下げるよりは、人として行うべき道に従い、古の聖人の教えで心の平安を得る方がずっと良い。

それに加え、人情として敗者は「運命のせいだ」といって嘆き、勝者は「自分の実力だ」といって自慢する。どちらも、愚かと見なすべきである。敗者となったならば自分の力不足を認め、勝者となっても運が良かったからと述べるならば、その人は本物であり、器の小さな人ではなく偉人というべき人であろう。昔の賢人も言っている。「分かっている者は言わないし、口にする者は、実は分かっていないのだ。」と。もしかすると、運命を語る者は運命を知らず、語らない者は、実は運命をよく分かっているのかもしれない。

***








・数:策(算木)で計算する意味。①かぞえる。③める、罪をかぞえたてて責める。⑥まわりあわせ、人の運不運、運命。⑦すじみち、道理。

*冒頭の一文、露伴翁の原作原文では、数という文字を使っている。

「数」とは何か。ここでは、漢和辞典を引用した、上記⑥の意味である。世には「数奇な」という言葉もある(茶道のスキ=数寄ではなく、ここでは、スウキ)。岩波文庫本の解説塩谷賛によると、この作品執筆時の題名は「定数」であったという。「定められた」「定めを受けた」ものとして、私は「数」を「運命」と言い換えて口語訳しよう。そして、それ以上に、露伴翁自身が、題名を「定数」から「運命」に変更しておられる。

・「洪水天に」「大旱地を」で、天地を対概念にした文辞。勿論、洪水は地上界でのこと。

・水神:

・華陰:地名、陝西省。

・璧:

・祖龍:

・沙丘:地名、河北省。

・一行阿闍梨:個人名なのか、一人のある僧の意味なのか不明、保留。

・祚ソ:①さいわい。②さいわいする、神が福録を下す。③くらゐ、天子の位。④とし。

・彊:弓の強い事から、①つよい、強い弓。②いる、むりにさせる。③つとめる。④さかい。

・万里は、聞く側の皇帝は「千里も万里もいろいろな処へ」と理解していたが、気付いてみれば、固有名詞であったのだ。

・瞿ク:両目、鷹がキョロキョロと見る意味。転じて、目を見張る。慌てる・恐れる等の意味。る、にらむ、猛鳥が凄い眼付きで物を見ること。②驚いて見る。③驚いて様子が変わる、ぎょっとする。④おそれる。⑤武器のほこ。⑥まち

・瞿然クゼン:①驚き怪しむ。②恐れる、おどろく。③喜ぶさま。④せわしいさま。

・野乗ヤジョウ=野史:①民間学者の書いた歴史。外史。←官編纂の歴史は正史。

・飲啄インタク:①水を呑みエサをついばむ、鳥類の飲食。②人が生活すること。

・紛:①まぎれる。②みだれる。③もつれる、むすぼれる、整理がつかなくなる。

 紛々:①花などが散りみだれるさま。②物事がわずらわしいさま。③多く盛んなさま。

漢字は、角川漢和中辞典による。

***

岩波文庫の冒頭の16行である。

原文は「青空文庫」でも見られる。また、禎さんという方(日日遊行)が口語訳をされていることを知った(但し、読んでしまうとその訳が私の頭にこびりつくので、見ないようにしている)。

この16行に4時間以上はかかった。図書館へ、史記と十八史略を参照に行った手間を考えると、もっとである(残念ながら、閉館間近で希望の本は探せなかった、無駄足でした)。修正や補足は今後に期したい。だが、こんなこと、とてもやってられないので、この口語訳の挑戦はこれで終わりです。




by tamon1765 | 2023-12-12 16:08 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
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