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ムカデの台


尼崎台が気になり出しました。

(茶窓閑話79の、原文釈文もどうぞ)

蜈蚣(ムカデ)の文様があると聞いて、今の感覚では「何?

気持ち悪い」というのが一般的感覚と思います。

まず、私がそうです。


ムカデは怪奇な生き物として、此方は嫌い怖れます。千年近く

前の例としても、俵藤汰の百足退治といった伝説もあります。

その一方で、乾燥して強壮剤としたり、切り傷などに対する

民間の薬だ、ということです。

また、毘沙門天の眷属としての信仰もあるそうです。


そのイメージは、「攻撃的な生き物」、「後へ戻らない(俗信?)」、

足が多いので「兵が多い(大軍)」となります。

となると、武士に好まれ、武具のデザインに取り入れられます。

(「後退しない」のはトンボが好まれたのと同じ)。

同様に、商人にとっても、「客足が多い」、「他店に負けない」

「お足=お金」といった意味でとらえられ、デザインに使われた

とも聞きます。

となると、茶器にムカデのデザインは、何ら不自然なことはない

ことになります。(とはいえやはり、私の趣味には合いませんが。)


処で、注意を要する点があります。

以上は、殆どが日本での話です。

一方、ムカデ文様の尼崎台は将来品です。

あちらの国、清では、漢文明では、ムカデをどう見ていたのか、

いうことになります。つまり、かの国で実際に意匠に取り入れた

理由は何か、という問題です。

私見で先ず思うのは、日本と同じような考えなのではないかと

いうことです。


但し、全く別の視点があるのではないかとも思えます。

これは、私の全くの思い付きの仮説ですが、蜈蚣あるいは百足と

いう「漢字」から派生する意味あいです。


類推の根拠の例としては、蝙蝠です。

話しが逸脱し、長くなるばかりで恐縮です :

蝙蝠(コウモリ)は、「蝠」の字が「福」と同じ発音なので、かの

国では福を呼ぶ生き物と見なされました。或いは、「偏福」(福が

集まっている)と発音が同じため、同じ意味に読み替えられたと

聞きます。確かに、日本語で音読みすると、どちらも「ヘンフク

(ヘンプク?)」ですね。

因みに、長崎のカステラの福砂屋のマークが蝙蝠。長崎といえば、

オランダ貿易、出島が有名です。しかし、江戸期にオランダ以外に

清、朝鮮との交易があったので、「当然長崎には漢字文化が他の地域と

違った意味で根付いていた(だから、福砂屋は蝙蝠を商標にした)」

と私は考えていました。

ところで、今回、福砂屋の㏋をみると、マークは維新前からではなく

明治になってからの制定とのことです。


蝙蝠の話しはさておき、蜈蚣が漢語でどう発音し、同じ発音の単語に

何があるのか、私には全く別世界のお話しなので、詳しい方に教えを

乞いたいです。


以下、余談です。

1)赤城神社ではムカデが神使となっているそうで、社殿の

彫刻が素敵で、興味深いです。

2)長唄「元禄風花見踊り」に『百足屋が』という一節があり、

 気になっていたことを思い出しました。浅川玉兎「名曲要説」を

開いてみましたが、「紐を売る店」とそっけない注釈でした。

3)武州川越に百足屋という名の元商家があり、現在は「築

380年の『田口家住宅』を再生・利活用した文化体験施設」

だそうです。「糸・組紐や鰹節を取り扱う問屋」だったそうで、

浅川玉兎氏の注釈のとおりでもあります。

写真で拝見すると、”mucadeya”とあり、kではなくcである

ことが私には全く理解できません。


最期に、台の現物ですが、淡交社の原色茶道大辞典に写真が

「尼崎唐物天目台」としてカラーで掲載されています。

残念ながら横からの写真なので、ムカデ文様を目にすることが

出来ません。残念。


とりとめの無いお喋り失礼しました。



<R5.10.2>文意を変えず文言補足


<R6.8.11>文意を変えず文言補足

・私にとって蝙蝠はやはり怖い不気味な生き物であり、幸福をもた

らす感覚は無かったので、かの国での扱いを知った時は驚きました。

子供の頃の夕方、公園から引き上げる黄昏時に、とっちに向かって

どう飛ぶか予測もつかず、突然低空に来るかもしれない恐怖を、

フト思い出しました。

今、町場でどの程度生息しているのでしょうか。

・漢字「百足」という書き方はかの国でも使われているか否かも

気になってきました。




Commented at 2024-08-11 12:11
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2024-09-29 08:50
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by tamon1765 | 2022-08-25 20:33 | お道具とお茶室 | Trackback | Comments(2)