幸四郎の茶杓余技
2022年 03月 05日
川尻清潭「楽屋風呂」は楽しい本である。
演芸画報や新演芸での連載が面白い。戦後、『花道』に
載った梨の花会の本からの、お話し。
さて、幸四郎ったって、今の幸四郎じゃない、
ひいお祖父さん七代目のこと。
この七代目という役者さん、私の理解では、先ずもって、
勧進帳を生涯千何百回と演じ、現在の重要な歌舞伎演目に
成さしめた人(そういえば、前の幸四郎=二代目白鸚が
お祖父さんの上演回数を越えたような記憶もあるが)。
押し出し立派、踊りも上手。声量も立派。性格も円満。
進取の気性もあり。家柄も養子とはいえ申し分なし。
となれば、天下をとってしかるべきだが・・・・・・
私の勝手な想像では、台詞が一本調子。いい人過ぎて
役の深みに欠けるきらいがあったんじゃないかな・・・・・・と。
それはさておき、後世への最大功績は、団十郎白鸚松緑
の三兄弟を梨園に残したこと。娘婿には、雀右衛門(先代)
と、白大夫と違って幸福なお方である。
さて、本題は、この高麗屋さん、「竹の茶杓を削る隠し芸」
があったといい、筆者によると、「その道の本職も三舎を
避ける」と迄!ある。
話しの落ちとしては、丈によると、竹は動きの伴う品は、
竹を逆に倒して使用するのが法則ということで、「竹槍も
根の方を切先にしないとダメ」という。
筆者が、「太十の光秀が、細い穂先をひっそぎ竹にして、
母の皐月を突き刺すのでは?」と聞くと、
「アノ狂言だけは突き刺す相手がサカサマだから仕方がない」
(笑)
川尻清潭「楽屋風呂」梨の花会 S30.11.20発行 p90