お出会いでお道具を返す訳
2017年 05月 27日
教則本を見ると、拝見後の道具の返し方が丁寧に記載されている。
しかし、なぜそうするのが書いてない。こんな風に考えれば
いいのではないかと思うので、試案であるが、ここに書いてみる。
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ある場面を想定してみる。
お茶事に誘われた。毎度毎度あることではない。
何年に1回あればよいこと、否、最初で最後かもしれない。
今回特に、お弟子さんをご一緒にとの有難い言葉。
で、稽古を始めてまだまだ日の浅いA子を連れて行くことにする。
さて、ご亭主は、家宝のお茶入れを出して呉れた。
このような立派なお道具をご用意されるとは!
これこそ、最初で最後の眼福であろう。
私は正客となり、妹弟子が詰め、A子は次客だ。
(現実に、家宝を出す茶事に初心者の状況は有り得ないです)
申し訳ないが、当然ながら茶事は、正客である私を中心に進む。
全ては、正客のために、というわけだ。
濃茶をいただき、拝見となった。
素晴らしい唐物茶入れに手が震えるが、有難く拝見する。
お詰めさんが仕覆を拝見し終わり、お出会いでお返しする処だ。
よっこらしょっと!と、気合を込めて立ち上がる。
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何故、年寄りで足のやや不自由な正客が立っていくのか。
お正客ファーストと考えたら、わざわざ足の悪いお正客を立た
せて、仕事をさせる必要があるのか。
しかし、ここがポイント。
1)家宝の茶入れを先程、見せていただいた。しかし、これが
最期と思うと、お願い!もう一寸だけ、もう一度見せて!
という思いが強い。目に焼き付けて、手に感覚を残したいです。
お名残りの拝見です。
2)亭主のこんな大切なもの、有り得べきことではありませんが、
もし万が一粗相があってはいけないです。そのチェックも
含めてもう一度を、拝見したいです。
と、考えてみたらどうでしょうか。
いつもお稽古で使い慣れているお道具へ、ちょっと違った思い入れを
することで、また違うのではないでしょうか。
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と、エラそうに書きましたが、言わずもがなの当然の事かも........
以上、私の勝手な考えですので、皆さんは師伝によってください。