円相をめぐって (2)

「円相をめぐって」の続きです。
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 禅の世界では円相内に己の名を書き入れる例があるのか、
良く行われていることなのかどうか、私は全く疎いのです。
今、偶々手元の本を開くと、2つの例が目に入りました。
どちらも、言葉は円相の外です。
 白隠筆 「一円相」 (永青文庫)
  盤珪永琢筆 「円相 賛釈迦弥勒他奴」 (禅文化研究所)
皆さんのご教授を願います。

 



ところで、天然以前に円相内に己の名を書き入れる例が
ありました。
天然の親戚筋、ごく身近にあったのです。
 それは、宗旦の長男閑翁宗拙が本来無一物と賛を書き加えて
いる円相です。
この中に「壺天」と宗拙自身の号が記されています。
この閑翁宗拙は一時加賀前田家に仕えたといいますが、
父から勘当を受け家督を継いでません。
勘当のわけを知りたいものです。
私のように、円相を既に一つの完結したものと捉える考え
の者にとって、この中に字を書き入れるとは、大きな驚きです。
これをした宗拙という方は、相当の精神の自由人であり、
私のような頭の固い人間には及びつかない発想です。
この方の、その何かを越えた鋭さが、世間一般との不適合と
なって、「家を継ぐ」ことと別の方向へ行ったのかも知れません。

 次ぎに、興味深いことには、先に天然の身近と言いましたが、
この軸の箱書きが、なんと如心斎なのです。
如心斎は、閑翁宗拙の此のお軸から、己の 「円相」 を思いつ
いたのではないかと想像をたくましくしてしまいます。

その他、明治7年に、官休庵八世宗守一指斎が、初代一翁
の二百年忌にあたり円相のなかに一翁の辞世を書いた例が
有ります。閑翁宗拙にならったかと思われます。

 さてここまで、如心斎は己の画像を許さず、円相内に号の
天然と書いたものをその代わりとさせたということを出発点に
話しを進めてきました。
ところが、今までの話をひっくりかえしてしまうのですが、
如心斎の画像が、実はこの世にあったのです。
不白筆記には
   我死後の像は不可致。其の方ハかりに像をゆるす。
  此形を絵に書、常楽庵に在時の図也と申候へと仰られ候。

とあり、愛弟子不白に許したものです。 
いま、その像はどうなっているのでしょうか。
現存するなら拝見したいものです。
ちなみに、表千家同門会発行の別冊同門(昭和51年4月)を
開いてみると、歴代の家元宗匠のお好みの中で四代江岑、
五代随流斎、七代、十二代惺斎が図像ではありません。

  さて、如心斎は利休ケラ判の軸も残しています。
利休百五十年忌に際してのものであろうと言われていますが、
ここでも画像ではないのです。つまり、絵師に利休像を描かせ
てそこに讃なり詩なりを加える方法を採っていないのです。
ケラ判によって、利休を表現しているのです。

最後に、人は何をもって亡き人と見なすか。
多くの場合、位牌がこれに代わる扱いを受けています。
位牌にとって重要なのは、位牌の形でも木というそのテクス
チャアーでもありません、そこに書かれた文字です。
つまり、記号です。名前であり、その名前が指し示す対象その
ものを意味します。それに依って、先人を思慕します。
多くの場合は、木像を刻みませんし、絵姿を残しません。(ふと、
平成12年春に伺った衣笠の持等院を思い出します。ここには歴代
の足利将軍の木像が鎮座ましましていました。これは富と名誉の
なせる技であり、一般庶民の世界ではありません)。
 しかし、今は写真をスタンドに立てて位牌の近くに置きます。
実際に箱根のお世話になった禅寺では、先代の位牌と写真を
飾っておられています。和尚さまからのお話で、どんなに
その先代を追慕しているかを、強く感じました。
これは規則や習慣で飾っているのではなく、自然な人間感情に
よるものです。
円相は禅宗という特定宗教のものなので、私達の生活一般とは
やや距離があります。
しかし、円相本来の意味を含みつつも、微妙に意味合いを変えて、
人を表すものとなると、文字や写真(図像)と近きものと捉え
ると、今の私達とつながっています。

これは円相と同じなのか、円相とは何か、という私の問いは、
もっと長い年月を必要とするでしょう。
取り留めのないお喋り、お付き合い有り難うございました。


続きならぬ、番外編「私の、円相のその後」をどうぞ
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by tamon1765 | 2006-07-28 07:16 | 雑談 | Trackback | Comments(0)

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