墨絵に書し松風の音


表千家七代目如心斎宗匠の
   茶の湯とはいかなるものをいふやらん
             墨絵に書し松風の音

の歌が気になっています。
平面の絵画から音が立ち上がってくるということは
はたして、どういうことなのでしょうか。

どのような文脈のなかで、語られているのかと出典を
紐解きますと、『不白筆記』のなかにあります。

歌の前に
 冬木喜平次より茶の湯の一品を如心へ所望致候得ば
 書て送りけるに

とあるだけです。

さて、私どもは会記を目にし、即物的にこの道具は
ナニナニでダレダレの作で、とお話しします。
一方、平面絵画から3次元的にその景色が現われる
だけではなく、妙なる音が響いてくるということは
とてつもないことです。

想像するに、ものをものと見ているのではなく、もの
そのものに秘められた物語を読み取ることであり、
ものとものとの関係性のなかから、別の世界を感じ取る
ということなのでしょう。
恐ろしく頭脳的な操作を行わねばならなく、且つ、
多くを感じ取りそれを膨らませられる感性が必要という
ことなのでしょう。
さらには、イメージの連鎖、本歌取りと言い換えても
よいかもしれません。それを行えるだけの蓄積を要する、
ということなのでしょう。

もっともっと修行が必要とあらためて感じました。
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Commented by たろう at 2009-08-27 17:12 x
tamon1765さんの解釈、面白く読みました。

如心斎宗匠のこの歌は、一休宗純禅師の道歌を引いているんでしょうね。

「心とはいかなるものを言うならむ墨絵に書きし松風の音」

とすれば。
この歌の言葉だけでうかがえる意味の他に、茶禅一味をめぐる消息について語っているのかも知れません。
Commented by tamon1765 at 2009-11-11 12:39
コメントありがとうございました。
新規巻き直し、したいです。
Commented by 小石 at 2014-06-20 08:22 x
はじめまして

 私も 【墨絵に書きし 松風の音】に心を寄せた一人です。この言葉を検索していたら、あなたのブログにあたりました。 この一休の前に、新潟西正寺の日本最古(世界最古)の即身仏・弘智法印の、即身仏になる直前(1363年)に詠んだ辞世の句があります。
   【 岩坂の 主は誰ぞと 問う人に 墨絵に書きし 松風の音 】
というものがあります。その弘智法印の即身仏と、この辞世の句を見た良寛(半年西正寺に仮住まいしていた)が、七言絶句を呼んでいます。

 題弘智法印像  粼皴烏藤朽夜雨 粼皴たる烏籐は夜雨に朽ち
            襴衫袈裟化暁烟 襴衫たる袈裟は暁烟に化す。
            誰知此老真面目 誰か知る此の老の真面目
            画図松風千古伝 画は松風を図きて千古に伝ふ。

この、弘智法印を題材にした【越後国柏崎・弘知法印御伝記】300年ぶりの復活初演ご提案して下さった、ドナルド・キーン先生と柏崎を繋ぎ、
今、今、柏崎に、「ドナルド・キーン・センター柏崎」ができました。
Commented by tamon1765 at 2014-10-28 11:27
小石さん はじめまして
お返事できずに今日まで来てしまいお恥ずかしいです。
拝見し、「墨絵に書きし松風の音」は何か一つの慣用句
なのかな、という気がしてきました。
連珠合壁集でも閲覧することが出来れば、一つのヒント
になるかもしれませんね。慣用句とまでいかなくとも、
墨絵と松風の音が、日本人の頭の中では連想されるという
事実があったのでしょう。
さて、現実の一休という方に、私は疑問を感じているので、
一休さん以前に詠んだ方がおられたというのも、興味深く
拝見しました。
また、だいぶ以前に、BS-TBSだったと思いますが、キーンさん
特集を放映していて、「ドナルド・キーン・センター柏崎」
と伺い嬉しく思いました。私も越後の出なので、いつか是非
尋ねてみたいです。
by tamon1765 | 2009-08-25 22:58 | ことば | Trackback | Comments(4)

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