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数寄者はどう見られていたか?


『醒酔笑』(巻之四、いやな批判)に、こんな一節がありました。私の超訳です。

***

道の傍らに、粗末な家があった。夜中に、道から人の咳と静かに通っていく音を聞きつけ、家の中での会話。

女「何者だろう? こんなよくない道なのに、ゆっくり歩いて行くだなんて。」

男「今時分あんな風に歩いていく者は、博打打か数寄者か連歌師か、他にいないよ。その3ツのうちじゃなければ、泥棒だろうよ。」

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当時の一般的感覚では、数寄者や連歌師は、まさに人間社会から外れた、普通じゃない人間、世捨て人と思われていた、ということを表していると思われます。

当時とは、桃山期から江戸初期のことです。




# by tamon1765 | 2023-12-19 14:10 | 茶つながりで、の雑談 | Trackback | Comments(0)

露伴翁『運命』の私の勝手な口語訳


幸田露伴の『運命』の冒頭部分を口語訳をしてみました。

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世の中には、自然と定められた「運命」というものがあるのだろうか。

有ると言えば有るようだし、無いと言ってしまえば無いようだ。

昔、洪水が頻繁に起こっていたが、禹帝がその功で治めた。一方、旱魃が地を枯らしてしまったが、殷の初代湯王がその徳で救った。ここには、運命は有るようだし、しかも無いようでもある。

次に、秦の始皇帝が天下統一し、皇帝を称した。

しかしながら、華陰の地に夜、水神が出現し、璧を秦の使者に托して、「今年、祖龍は死ぬであろう」と言ったという。結果、そのとおりに始皇帝はその後沙丘の地で崩御された。

また、唐の玄宗皇帝は、開元時代30年間、天宝年間は14年間、太平を謳歌し贅沢を究めた。とは言いながら、開元の隆盛期に、一行阿闍梨というが「陛下は、万里も(いろいろな処へ)行幸せられ、力が及ばなくなります。」と申し上げると、「訳の分からないことを言うものだ。」と思われたのだった。それが、安禄山の乱が起きて、天宝15年に皇帝は乱を避けて蜀の国へ入る際に、万里橋にさしかかり、驚きハッとして「あの者が言っていた、万里に行幸した時、とはこのことであったか」と悟りなされたという。

これらのことを思うと、運命は無いようでもあるが、有るようでもある。

『定命録』『続定命録』『前定録』『感定録』等、小説や野史の記すところを見れば、吉も凶も禍も福も皆定まった運命があって、飲み食い泣き笑いといった人間生活のすべてが天の意志によるものなのかと考えてしまう。

とはいいながら、書いてあるものの多くは軽い雑書類である。どうして信じるに値しようか。万が一、運命というものがあるとしても、予測できないのが運命である。そんな推測し難いものを畏れて、占い師といった輩に頭を下げるよりは、人として行うべき道に従い、古の聖人の教えで心の平安を得る方がずっと良い。

それに加え、人情として敗者は「運命のせいだ」といって嘆き、勝者は「自分の実力だ」といって自慢する。どちらも、愚かと見なすべきである。敗者となったならば自分の力不足を認め、勝者となっても運が良かったからと述べるならば、その人は本物であり、器の小さな人ではなく偉人というべき人であろう。昔の賢人も言っている。「分かっている者は言わないし、口にする者は、実は分かっていないのだ。」と。もしかすると、運命を語る者は運命を知らず、語らない者は、実は運命をよく分かっているのかもしれない。

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# by tamon1765 | 2023-12-12 16:08 | 雑談 | Trackback | Comments(0)

『茶窓間話』を読む方へ


当ブログの「茶窓間話、閑話」を読む方へ

 

 『茶窓間話』の検索近道もご参照ください。


1.この翻刻は、享和四年刊「茶窓間話」です。

国立国会図書館デジタルコレクション

https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000007308473-00

を原本としています。


2.私は、○毎に番号を振りました。その順番に

なるよう書込みしています。

 なお、上巻はno.162(原本では26枚)、

中巻はno.6311123枚)、

下巻はno.11211315枚)、です。

下巻の附録については、終了後考えます。


3.各話の表題は、私の恣意的なもので、本文そ

のものではありません。


4.書込みは、令和3712日から開始し、

基本的に、一日一話となるよう書込みしています。


5.公開が未だ分は、今後早い時期の公開に努めます。

(読みあぐねていたり、訂正予定のあるものです)


6.あくまで、私独りの読みなので、間違いがある

と思われます。

お気付きの方は指摘いただくと有難いです。


7.また、私の読み間違いから生じる、不利益に

ついて当方では責任を負いかねます。その程度の

ものとして扱い下さい。


8.過去アップしたものを直した上での、再度の書込み

です。過去のコメントを残してありますので、時間的

前後が生じています。過去にコメントを頂いた方で、

削除を希望される方は、お申し出ください。削除します。


(令和423日)




# by tamon1765 | 2023-12-07 07:32 | 『 茶窓間話、閑話』 | Trackback | Comments(1)

大津絵展に行ってきました


大津絵が好きなので、東京の八王子市立夢美術館に行ってきました。

今回、洋画家の小糸源太郎氏のコレクションと共に、国文学者の信太純一氏の志水文庫(神戸女子大学古典芸能研究センター)のコレクション等の展示です。

とにかく、おおらかさと滑稽な楽しさ(実は私には風刺と言った皮肉な感想は生じない)が大好きで、楽しんできました。

さらに、道歌があると、つい何と書いてあるか、気になります。

今回特に3点が気になって読んでみました。図らずも、女難に酒に気を付けろという教えでした。


狐女 <腰かけて三味線を弾いている女性の着物の裾から狐のしっぽが出ています>

・おやまとも流れの身とも云うからに、人を褒めたり、またのぼせたり

 (おやまは、歌舞伎の女形ではなく、芸者のこと)

・目は酒に耳は優しき三味の手に、うかうか乗つて化かされぞする

・うかつけばいろのまつねにつままれて、あとでこんくわいすれど還らず

(こんくわいは狐のこと、狐の鳴き声コーンからか。後悔との掛詞)

(上の句は不明。「気が付けば色の待つ音に摘ままれて」?)

・気も知らで、顔に****嫁とりて、後に悔やむぞ、はかなかりける

(**部分を書き留め漏らし。引かれてとか騙されといった意味がはまります)

以上、まさに、女難に注意という教え。


鬼の三味線 <鬼が三味線を弾き、盃と徳利があります。>

・目は酒に、耳は優しき三味の音に引かれて、さらに鬼と思はず

・三味弾いて、酒を勧めて気を奪い、人をとり喰う鬼の多さよ

・酒汲んで、三味線弾いて気を奪い、人をとり喰う鬼の多さよ

・一心にとつて喰うのは目にもみず、三味線かぢる鬼ぞ怖ろし

(目にも見ずは、一瞬でということ)

以上、鬼が酒を勧めてくれて、三味線弾いてくれて、私共を接待しているわけです。鬼とは何を象徴するのでしょうか、酒と気持ちの良い音楽で理性を失わないように。兎に角、注意です。


猫と鼠 <猫と鼠が向かい合って、鼠は大杯を傾け、猫は箸で赤唐辛子を勧めています。手前には、徳利が置いてあります>

・騙されて、まだその上で情(せい)出して、踊りて舞ふて、そして取らるる

・恐ろしきものを、にやんとも思わざる、心から身を、つゐに取らるる

 (にやんは猫の鳴き声と、「何とも」の掛詞)

・猫が酒盛りて、その身を亡ぼすとも知らで、鼠が呑むや、ちりちり

 (ちりちりは鼠の鳴き声チューチュー?。意味はチビチビ呑む感じ?、「チュルチュル吸い込み飲む」ならば現代語でもある。)

・聖人の教えを聞かず、つゐに身を、亡ぼす人の仕業なりけり

以上、鼠が騙されていい気になって大酒飲んでいる風情。その後どうなるかも考えずに......。猫と鼠であって、鬼と対峙する人という訳でないので、他人事ではある。一見、敵同士が仲良く酒宴をしている図なので、楽しめる。しかし、道歌を読むと、酒に溺れて己の生死を見失っている鼠のさまが怖い。明日は我が身だ。アル中にならぬように、気を付けなければ。


怖ろしい状況ばかりなので、口直しに。


瓢箪駒 <絵は、瓢箪から馬が飛び出しています>

・うち開けて、見れば大きな駒が出た。後は軽うて元の瓢箪

 (駒は馬のこと)

・世の中はとてもかくても鳴り瓢、軽き身にこそ楽しみもあれ

 (鳴り瓢とは、?空っぽだから風が吹くと音が響く感じ?)


瓢箪から駒といえば、縁起の良さを思いますが、むしろ後に残った瓢に、空っぽということで、身軽な何か自由さがあっていいですね。瓢箪鯰(大津絵にはこの題材もあります)をイメージして禅的な趣も感じます。




# by tamon1765 | 2023-10-11 22:56 | 雑談 | Trackback | Comments(0)

別無工夫


別無工夫  べつにくふうなし

放下便是  ほうげすればすなわちぜなり


相国寺に上記の禅語があるというが、

前半が夢窓疎石、後半が足利義満(三代将軍)という。

両者とも、なかなか重みのある字で、興味深い。


出典は?と思い、手掛かりが無いので、ネットで検索したら、

レファレンス共同データベース」というものに遭遇した。

一瞬で判明してしまい便利な世の中だ......




# by tamon1765 | 2023-09-26 21:47 | ことば | Trackback | Comments(2)

お茶、その他についての、極く私的なブログ


by tamon